寄稿 : 相川 聡志
ASSET & ACCOUNTING ADVISORS CO., LTD.(愛宕山総合会計事務所バンコクオフィス)
https://atagoyama.net/
代表 相川 聡志
日本 公認会計士・税理士
1979年生まれ
2003年:新日本監査法人(現、新日本有限責任監査法人)入所
2008年:愛宕山総合会計事務所を独立開業
2011年:会計大学院客員准教授就任
2012年:シンガポールおよびバンコクに会計サービスを展開
上場企業向けに、タイ国内の内部統制構築、原価計算構築、J-sox代行(整備状況評価書・運用状況評価書の作成代行)、内部監査代行サービスを提供。同時に、連結財務諸表作成のための連結パッケージの作成・検討サービスを提供。海外進出に対する税務、タックスヘイブン税制対応、富裕層移住、相続税対策
本記事では、タイにおける仮想通貨の譲渡にかかる税金の考え方ついてまとめました。本日現時点(2023/03/08)での情報となりますので、予めご理解ください。
目次
1.タイにおける仮想通貨の課税について
2.居住国での課税(日本・シンガポール・タイ)
3.資産の所在地国での課税
4.租税条約での取り扱い
タイにおける仮想通貨の課税について
タイにおいては、税法40条において、仮想通貨やデジタルトークンの譲渡益、保有・占有による分配金に関する所得は課税、と書かれています。原則的に、仮想通貨の譲渡益は課税です。
ただし、税法41条において、国外において生じる所得は、タイに持ち込まない限り課税対象外となっています。条文では明示的ではないですが、国外源泉所得を同一暦年にタイに持ち込まなければ課税はされないという見解が出されています(Gor.Pohr.Or第二決議1985年2月21日)。
従いまして、例えば、タイ国外の海外取引所において仮想通貨のトレードを行い、譲渡対価を翌暦年以降にタイ国内に持ち込んだ場合には、当該譲渡所得はタイでは課税対象外となります。
まとめ
- タイ国内で仮想通貨を譲渡した場合は課税対象
- タイ国外で生じる所得はタイに持ち込まない限り課税対象外
- タイ国外源泉所得をタイに持ち込む場合であっても、翌暦年以降に持ち込む場合には課税されない
タイは外国為替管理が厳しい国の一つです。従いまして、タイ国内からタイ国外に銀行送金をする場合には、①国外から送金された送金書類、②タイ国内での所得税申告書、を提出しないと送金できない場合があります。また、JPYを日本からタイのJPY口座に送金したとしても、PYからTHBに為替換算・THBからJPYに為替換算して入金となり、リフティングチャージという名目で為替手数料が発生します。タイから日本に送金する時も同様に為替手数料を取られます。
従いまして、あまり多くのお金はタイに持ち込まないのが賢明です。生活に必要な分だけに留めることをお勧めします。
課税関係は、居住地国での課税と資産所在地国の課税、2つの側面から検討することが必要です。さらにその上で、居住地国と資産所在地国の租税条約を検討することが必要です。
居住国での課税(日本・シンガポール・タイ)
参考までに各国の課税について見ていきましょう。
日本については、仮想通貨を譲渡した場合は、雑所得もしくは事業所得として最高55%(所得税45%+住民税10%)が課税される可能性があります。
シンガポールについては、キャピタルゲインは非課税であり、譲渡において課税関係が生じることはありません。
タイについては、原則として、仮想通貨やデジタルトークンの譲渡所得は課税です。ただし、国外で生じる所得はタイに持ち込まない限り課税対象外となっており、国外取引所を使って生じた仮想通貨やデジタルトークンの譲渡所得は課税されないです。
- 日本
- 仮想通貨の譲渡所得は雑所得もしくは事業所得、累進総合課税
- シンガポール
- キャピタルゲイン課税なし
- タイ
- 仮想通貨やデジタルトークンの譲渡に関する所得は原則として課税
- 国外源泉所得はタイに持ち込まない限り課税対象外(タイ国外取引所での譲渡所得は課税対象外)
資産の所在地国での課税
次に、資産の所在地国という観点からも見ていきましょう。
非居住者であっても、その国に資産があった場合には、その国で譲渡した場合には課税となる場合があります。日本でも下記の通りまとめられています。代表的なものは、日本国内に所在する不動産です。
この中で一番最後に「非居住者が国内に滞在する間に行う国内所在資産の譲渡」というものがあります。非居住者であっても、日本に滞在中に、日本に所在する資産(仮想通貨も含む)を譲渡すると日本で課税になります。
日本税法(非居住者に対する国内源泉所得)
所得税法161条1項3号、国内資産の譲渡は課税
所得税法施行令281条1項、対象資産8種が例示
1.国内所在不動産
2.国内所在不動産上の権利、鉱業権、採石権
3.国内所在山林
4.内国法人株式、出資持分
5.不動産関連法人株式
6.国内所在ゴルフ場株式、出資持分
7.国内所在ゴルフ場その他施設利用券
8.上記ほか、
非居住者が国内に滞在する間に行う国内所在資産の譲渡
租税条約での取り扱い
タイと日本の租税条約を見てみると、「4項:1-3項以外の資産の譲渡所得は、所在地国課税」とあるので、所在地国で課税されることになります。
つまり、先程、タイ居住者は、タイ国外の資産の譲渡については課税がされないと説明しましたが、タイ居住者が日本に一時帰国したタイミングで、ウォレット等を利用して仮想通貨を譲渡した場合、日本の仮想通貨取引所を利用して売買した場合、等、その資産は日本に所在する資産として課税される可能性があります。
タイ⇔日本の租税条約 13条
1項:不動産譲渡所得は、所在地国課税
2項:事業資産譲渡所得は、所在地国課税
3項:船舶航空機等譲渡所得は、居住国課税
4項:1-3項以外の資産の譲渡所得は、所在地国課税
さいごに
「[寄稿記事] タイにおける仮想通貨の譲渡益課税について 」はいかがだったでしょうか?
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